衆院法務委員会 コロナによるヘイトスピーチ、裁判所職員定員法質疑、検察官定年延長問題
志村けんさんの死去に伴うヘイトスピーチについて質問しました。
森大臣は「新型コロナに関連した不当な差別や偏見はあってはならない。ヘイトスピーチをはじめ差別解消にしっかりと取り組む」と答弁。
新型コロナ問題は、中長期の取り組みとなります。今後もヘイトスピーチが形を変えて出てくる恐れがあります。
ヘイトスピーチを許さぬたたかいは続きます。
続いて検察官の定年延長問題で質問。
法務省は、昨年10月末、検察官に定年延長は必要ないと結論を出しました。
その時に根拠とした諸事実はその後変化したのか?と質問すると、森大臣は「変わっていない」と明言。立法事実なし!
政府の不当な介入を防止する規定はあるのか?と質問するが答弁できず。
立法事実も歯止めもない法案は撤回しかありません!
- 会議録 -
○ 松島委員長 次に、藤野保史さん。
○ 藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
新型コロナウイルスは日本社会全体に大きな影響を与えていると思います。さまざまな省庁にかかわる動きの中で、当法務委員会との関係でいいますと、きょう、冒頭取り上げさせていただきたいのは、この新型コロナの問題を特定の国へのヘイトスピーチに悪用している動きがあるという問題であります。
昨日、志村けんさんもお亡くなりになりました。私も心からお悔やみを申し上げたいと思っております。
しかし、この亡くなられた志村けんさんのことまでヘイトスピーチに悪用されて、例えば、志村さんは中国人に殺されたとか、中国人が殺したとか、そういう憎悪をあおるような悪質なツイートが大量に拡散されてしまっていたり、あるいは、それにとどまらず、相手方の殺害とか、あるいは相手方を排除するということを呼びかけるような声まで出てきている。まさにこれはヘイトスピーチだと思います。
森大臣は、今月六日の所信表明の際にもこのヘイトスピーチについて取り上げられて、丁寧かつ粘り強く取り組みますというふうに表明をされました。そのとおりだと思うんですね。やはり丁寧な、粘り強い取組が必要だと思います。
昨年の十一月十四日の参議院の法務委員会でも、ヘイトスピーチ解消法の質疑の際に、「国籍、人種、民族等を理由として、差別意識を助長し又は誘発する目的で行われる排他的言動はあってはならないと考えます。」と答弁されております。
新型コロナへの不安というのは、今後どのような形で噴き出すのか、我々もわからないところがあると思います。それがヘイトスピーチという形で再び起きてくる可能性もこれはあるわけでありまして、今こそやはり政府は、法務大臣としてメッセージを発するべきだというふうに思います。
そこで、大臣に、やはりこの新型コロナの問題をめぐっても、特定の地域に住む人々や特定の人種や民族、これを攻撃したりあるいは排除するような、敵対心をあおるような行為は許されないんだ、あってはならないんだという強いメッセージを改めて発していただきたいと思うんですが。
○ 森国務大臣 このたびお亡くなりになられました志村けんさんの御冥福を心からお祈りするとともに、新型コロナウイルスでお亡くなりになった全ての方の御冥福をお祈りいたしたいと思います。
新型コロナウイルス感染症に対する国民の不安は増大しております。そのような中で、新型コロナウイルス感染症に関連して不当な差別や偏見があってはならないことは言うまでもないことでございます。
法務省としては、これまでも、SNS等においてその旨のメッセージを発信しております。例えば、人権擁護局のツイッターにおいて、新型コロナウイルス感染症に関する誤った情報に基づく人権侵害がないように、日本語のほかに中国語でも発信しているところでございます。
法務省としては、ヘイトスピーチの解消を始め、偏見や差別のない社会、そして全ての人がお互いの人格や尊厳を大切にして生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現に向け、人権擁護活動にしっかりと取り組んでまいります。
○ 藤野委員 この新型コロナの問題というのは長期化するというふうに言われております。ですから、今後も、大臣が所信でおっしゃったように、このヘイトの問題、ヘイトスピーチ、どのような形で出るかわかりませんので、丁寧かつ粘り強い取組を求めたいというふうに思います。
その上で、本法案の質疑に入りたいと思うんですが、本法案は、裁判官についての定員は増減なしと先ほどありました。しかし、裁判官以外の裁判所職員について十七名の減員を行うという中身になっております。全体で十七名の減員というのは過去最大の減員でありまして、裁判所の人的体制というのは、これによってますます不十分になっていくことになります。
そもそも、司法府というのは三権の一つを担う存在でありまして、司法の独立、憲法で定められた国民の裁判を受ける権利、この充実のために独自の、行政とは違った独自の司法府としての予算と体制をつくる責任と権限をお持ちなわけですね。
ところが、その裁判所が、行政府、内閣が策定した定員合理化計画にある意味協力している。協力する義務はないわけですね、これはもう当委員会でも何度も確認しておりますけれども、協力する義務はないんだけれども、これを協力してきたということで。しかも、これは一回、五年間でしたかで終わったんですけれども、この計画自体は。今度の五年間もこれから始まるわけですが、これにまた協力しようという。本当に、そういうことで憲法で定められた国民の裁判を受ける権利、これを保障する責任を果たすことができるのかということだと思います。
私たちは、これは、この間の定員合理化計画への協力を見ても、裁判所の体制というのは本当に弱まっている、ですから、この法案には反対という立場をとりたいというふうに思っております。
その上で、きょうは、新型コロナウイルスが裁判所の現場に与えている影響についてお伺いします。
最高裁にお聞きしますが、裁判所にどのような影響が今出ているでしょうか。
○ 村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
全国の裁判所におきましては、今回の新型コロナウイルス感染症の影響によりまして、期日の性質や当事者の意向等も考慮した上でございますけれども、特に急ぐというものでない事件につきましては期日を変更したり、あるいは期日を実施する場合であっても電話会議を利用したりすることなど、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の防止ということの対策に努めているところでございます。
もう少し具体的に申し上げますと、例えば、実際に、当事者に発熱等の症状があるという御連絡をいただいて、裁判体の判断によって期日の変更を行ったというような事案もございますし、また、手続が終わってから、発熱等の症状が関係者に出たという連絡をいただいて、当事者の動線等を振り返って確認した上で消毒等の必要な対応をとったというものもございます。また、感染防止の観点から、多数の傍聴者が見込まれる事件について、間隔をあけて着席させるように傍聴席の利用法を定めて、そのような期日を実施したというような形で事例が生じているものもございます。
このような形で、事件処理の面におきましても一定の影響が出てきているところでございます。
○ 藤野委員 もうちょっと数字的なものを私はお伺いしたかったんですけれども、まあ、いろいろな影響が出ているということでありました。
東京地裁などでは、五十二の傍聴席のうち三十三を使えないようにして間をあけるとか、そういう取組もやられているということが報じられております。さいたま、水戸、岐阜、横浜、千葉、名古屋、浜松、大津などの地裁や支部で、裁判員裁判の公判や選任手続、これが取り消されたというふうに、きょうも報じられております。東京新聞ですね。
やはり、なかなか大きな影響がこれからも出てくる可能性というのは、これは否定できないというふうに思うんですね。
というのは、やはり裁判というのは当事者が法廷や調停室に集まって話し合うということで進めていく性質のものでありますので、どうしたってこれは、なかなか限界もあるというふうに思います。特に刑事事件について言うと、やはり、憲法に定められた迅速な裁判を受ける権利というのがあるもとで、その要請があるもとで、じゃ、今回、その対策とどう調整をとっていくのかという難しい問題もあるというふうに思います。
最高裁は、事務連絡をことし二月二十六日に出されておりまして、今少しおっしゃられたさまざまな検討もされていると思うんですが、もう少し具体的に、例えばこういう検討をしているとか、そういうのをもう少し具体的に御紹介いただけますか。
○ 村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
委員御指摘の、二月二十六日付の事務連絡におきまして、御指摘があったとおり、事件処理については閉鎖空間において近距離で会話を行うといったこともあり得るわけですので、そういった性質の期日かどうか、あるいは当事者の意向はどうかといったことも考慮した上で、先ほど申し上げたように、柔軟に期日変更等をするというようなことも事務連絡に記載をいたしまして、対策の検討を求めております。
これを受けまして、全国の裁判所におきましては、先ほど申し上げましたが、期日の性質、緊急性の度合い、当事者の意向等を考慮した上で、委員の御指摘にもあったとおり、期日の変更をしたりしている例がございます。また、期日を行う場合であっても、電話会議を利用したりするということなどで感染症の対策に努めております。
また、その後も、三月の六日付で別途事務連絡を出しておりまして、多数の傍聴者が見込まれる事案につきましてはおおむね一メートル以上の間隔をあけて着席していただくといった形にいたしましたり、あるいは、傍聴券交付事件におきましては傍聴券を求めるための列ができるわけですけれども、そこにおいても、感染の拡大というようなことにならないよう対策をとるようにというようなことの検討を求めているところでございまして、そういったことが実際に行われているというところでございます。
○ 藤野委員 私も、全司法労働組合の皆さんから現場の実態を伺ってまいりまして、この間の事務連絡、最高裁が出されているのでいいますと、そういう距離をとるとかはいいんですが、例えば体制の問題で、必要に応じて関係機関と連携し、支部や独立簡裁についても必要な人員を確保できるよう応援体制を検討しておくというのもあるんですね。ここの部分が今現場任せになってしまっていて、非常に大きな矛盾を生んでいるというお話を聞いております。
例えば、現在のところ、家族的責任を抱えた職員は親族を動員して何とかやりくりしているので目立った混乱はないものの、じわじわ休みの方がふえているとか、あと、深刻なのは介護なんですね。老人のデイサービスが閉所になったところもあり、老人介護を抱えた職員は悲鳴を上げていると。一斉休校の関係では、現場に近い管理職である主任書記官などの年代が一斉休校のお子さんがいる年代なんですけれども、それが一斉休校で苦労して、職場から欠ける状態が生まれているとか。こういう実態が既に私どもにも寄せられております。
ですから、事務連絡で応援体制とおっしゃっているのはいいんですけれども、必要な人員を確保というのはおっしゃっているのはいいんですけれども、具体的にどうするのかというところまで踏み込んで支援しなければならないというふうに思うんです。
というのも、この間、裁判所職員については抜本的な増員が行われず、地方から都市へということで大規模な振りかえが行われて、職員が二人しかいない、ここにも出てくる独立簡易裁判所、いわゆる二人庁、二人しかいない二人庁というのが、二〇一二年には十七庁でしたけれども、これが今三十五庁にふえているんですね。倍増しております。ですから、ただでさえ少人数のところに今回のコロナの問題も起きているということですから、きめ細やかな対応を求めたいと思うんですね。
その点で、人事院にお聞きしたいんですけれども、特別休暇という制度を今回とられていると思うんですね。特別休暇というのはいいんですけれども、いいんだけれども、やはりこの制度が、特別休暇の中にもいろいろな号がありまして、十七号とか十八号とかいろいろあるんですけれども、これとの関係で、出勤困難という枠組みを使った結果、例えば、一度出勤して途中でお迎え、例えば幼稚園とかだと十五時に来ないといけませんから、その十五時に行くためには途中で退勤しないといけないんですが、そういうのに対応できないとか、いろいろあるんですけれども、これになかなか対応できない。
済みません、人事院じゃなくて、そちらでお答えいただければいいんですが、これは柔軟に対応できないんでしょうか。
○ 堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
裁判所職員につきましては、休暇に関する人事院規則等を準用しておりまして、特別休暇についても人事院に準じた運用を行っているところでございます。
○ 松島委員長 もうちょっと大きい声で。
○ 堀田最高裁判所長官代理者 はい。
今般の出勤困難に関する特別休暇につきましても人事院に準じて運用をしているところでございますが、新型コロナウイルス感染症対策に伴う小学校、中学校等の臨時休業等により、子の世話を行う職員が当該世話を行うため出勤が困難となる場合等に認められる特別休暇でございますので、出勤に関するものということでございますので、退庁時には利用できないものと承知しているところでございまして、裁判所においても同様の運用となっているところでございます。
○ 藤野委員 いや、私が聞いたのは、それを知った上で、ただそれではいろいろ矛盾があるので、柔軟にできないかと。
例えば、幼稚園は十五時までにお迎えに行かないといけないんですね。学童だってあるわけです。あるいは、時差出勤とか、いろいろ関係もあったりして、なかなか対応できない。あるいは、免疫不全の持病があるために、感染予防のために自宅待機をしたいんだけれども、これは、今の特別休暇のあれでは、予防、自主的なやつは自宅待機できないと言われたというふうに、そういう声も、実例も挙がっているわけですね。
新型コロナに感染している可能性があると言われたけれどもどうしようかという判断のときに、ずばっと、そういうのはいいですよ、自宅にいてくださいと言ってくれればいいんだけれども、そこがはっきりしないので、可能性では適用外だと言われているんですね、今の段階。これでは、本当の意味での感染拡大防止にもならないというふうに思います。
人事院に準じてとおっしゃっておりました。この出勤困難休暇というのは、人事院の規則一五―一四の二十二条の一項十七号だと思うんですね、十七号。これ以外にも、例えば、十八号は台風などの災害時に早い退庁が認められる、あるいは、十六号は、災害等やこれに準ずる場合で職員が勤務しないことが相当と認められるときという規定があるんですが、これが日数制限があったりしてとか、いろいろあるんです。
確かに制限はあるでしょう、あるんですけれども、かつてない事態なわけですから、ここら辺は、やはり準じてとおっしゃるのであれば、柔軟に運用できませんかということを聞いているんです。ちょっと、もう一回お願いします。
○ 堀田最高裁判所長官代理者 先ほどの制度的な限界もあるところでございますが、裁判所におきましては、例えば、早出遅出勤務等といいまして、他の制度も利用して勤務時間を早めることで一定程度早目に帰ることもできるといったようなことも、運用上、工夫をしているところでございまして、今後も制度の枠内でできる限りの配慮をしてまいりたいと考えております。
○ 藤野委員 早出遅出とおっしゃいましたけれども、まさにそれが、十五時までに幼稚園に行かないとというのに使えないんですよ。幼稚園、十五時までの対応というのは、早出遅出というのは認められたけれども、一番早い出動班というのが七時から十五時半という枠でして、枠外になっちゃう。だから、この早出遅出出勤ではだめだということを寄せられているんですね。
ですから、制度の枠内と最後おっしゃいましたけれども、そこじゃなくて、これだけの事態が起きているわけですから、そこを本気で、裁判所としても、感染拡大も防止するし、職員もちゃんと守るという立場に立てば、そういう制度の枠にとらわれず対応していくべきだというふうに思っております。
もう一点だけお聞きしますが、例えば二月二十五日に政府の基本方針が出されて、一斉休校などの、もう突貫工事をやって、突貫工事の合間で、三月に入るまでに休まざるを得なかったという職員もいらっしゃって、その場合、休暇に認められるのかといったときに認められないというんですね、今の場合。
これもやはり、さかのぼって特別休暇を適用して、特に非常勤の方などは無給になってしまう、非常勤の方は一番深刻なんですね。ですから、こういう方にもしっかりと給料が払えるように、多分、お答えは同じになると思うので、柔軟な運用を求めたいというふうに思います。
やはり、これは本当にかつてなかった事態でありますので、柔軟な対応をしていくことが感染防止にもつながるし、裁判の体制にもつながるということで、ぜひ御努力をいただきたいと思います。
次に、検察官の定年延長問題についてお聞きをします。
政府は先日、検察庁法の改正案を国会に提出しまして、第二十二条は、内閣が定めるところによるという文言がたくさんある条文がつけ加えられております。
東京弁護士会は三月十七日に会長声明を出しまして、このような改正がなされれば、時の内閣の意向次第で、検察庁法の規定に基づいて上記の東京高検検事長の勤務延長のような人事が可能になってしまう、しかしこれは、政界を含む権力犯罪に切り込む強い権限を持ち司法にも大きな影響を与える検察官の独立性、公平性の担保という検察庁法の趣旨を根底から揺るがすことになり、極めて不当である、こういう会長声明ですね。
改憲問題対策法律家の六団体連絡会も三月二十四日の共同声明でこうおっしゃっているんですね。この検察庁法改正案は、検察官全体の人事に政権が恒常的に介入することを合法化し、刑事司法の独立と公正をじゅうりんし続けるものであることから、その影響ははかり知れませんと。
まさに、今回の法案というのは、三権分立の見地から、刑事司法の独立という点から、与野党を超えて、これは認めてはならない問題だというふうに思います。
内閣法制局にお聞きしますけれども、検察庁法二十二条というのは、ことし一月、法務省が解釈変更すると言い出した後でつけ加えられた、これは間違いないですか。
○ 木村政府参考人 今回の国家公務員法等の一部を改正する法律案におきます検察庁法二十二条の改正案ということでございますけれども、それに国家公務員法の勤務延長制度の適用を前提とする読みかえ規定でございますとか管理監督職勤務上限年齢による降任等に相当する独自の制度についての特例規定、こういったものが盛り込まれましたのは、本年一月の解釈変更の後ということでございます。
○ 藤野委員 要するに、一月までこの改正文というのはなかった。それはなぜかというと、改正する必要がなかったからだと思います。
配付資料の二を見ていただければと思うんですが、これは三月十八日の当委員会で私が委員長にお諮りをして、その後の理事会でも確認されて提出された、法務省から提出された検察庁法の改正案の検討を示す文書であります。私が御紹介したのは通し番号で百六十二というもので、これは昨年十月末段階の検討状況、検討結果を示したものであります。
ここに4ということで、「検察官につき管理監督職勤務上限年齢による降任等の特例と同様の規定を設ける必要はないことについて」とあると思うんですね。(1)はいいんですけれども、(2)のところ、ア、イとあるんですが、法務省、これをちょっと紹介していただきたいんですが。
○ 川原政府参考人 御指摘の資料の御指摘の部分を読み上げさせていただきます。
まず、ア、検察官については、管理監督職勤務上限年齢制を導入し得ないことから、本条の適用はないところであるが、管理監督職上限年齢制の趣旨を踏まえた仕組みを導入することから、改正国家公務員法第八十一条の五と同様の規定を設けることも考え得る。しかしながら、検察官については、職制上の段階がなく、降任等が概念し得ないことから、ほかの一般職の国家公務員に比してより柔軟な人事運用が可能である。また、検察官は、定年に達したときに退官することとされているため、同時期に一斉に退官することとはされていない。さらに、管理監督職上限年齢制の趣旨を踏まえて導入する仕組みにおける異動時期は誕生日を基準としていることから、一斉に異動することにもならない。このように、検察官については、適切な時機に異動を前倒しするなどすることが容易であって、異動により補充すべきポストが一斉に生ずることにもならないことから、現在も国家公務員において導入されている定年による退職の特例(国家公務員法第八十一条の三)に相当する規定も置かれていない。
イ、したがって、改正検察庁法第九条第一項、第十条第一項、第二十条第二項及び第二十二条第二項により管理監督職勤務上限年齢制の趣旨を踏まえた仕組みを導入したとしても、それにより公務の運営に著しい支障が生ずるなどの問題が生ずることは考えがたく、検察官については、改正国家公務員法第八十一条の五と同様の規定を設ける必要はない。
以上でございます。
○ 藤野委員 私は、これは極めて論理明快な文章だと思います。検察官は職制上の段階がなく、降任等が概念し得ない、同時期に一斉に退官しない、同時期に一斉に異動もしない、だから、公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題が生じることは考えがたく、勤務延長の規定を設ける必要はないと。
大臣にお聞きしたいんですが、要するに、職制上段階がないとか、一斉に異動しないとか、一斉に退官しないとか、三つのないといいますか、三ないというべき状況、これは十月末の段階の文書なんですが、この十月末からこの状況は変わったんでしょうか。
○ 森国務大臣 昨年の十月末ごろ時点では、御指摘のように、退官や異動により補充すべきポストが一斉に生ずるおそれがあるかないかという視点のみから検討をしておりました。(藤野委員「あるかないかだけ、まず答えてください」と呼ぶ)はい。これについては現在も同様でございます。
○ 藤野委員 まさにここは、私は立法事実にかかわる問題だと思うんですね。昨年十月の段階では、この三つ、三つというか、要するに、全く検察官には国家公務員一般職の問題は当てはまらないんだ、なぜなら検察官にはまさにこういう特性があるからだということなんですね。まさにこれは立法事実の部分です。
立法事実の変更はないと今大臣はおっしゃいました。これは重大な問題だと思うんですね。こういう理由で検察官には同様の規定を設ける必要はないと言っていた、ここを変えるのではなくて、全く別の、昭和五十六年から何かインターネットが発達したとか、よくわけのわからない理由を持ってきて、今回、この後ろの部分、きょうはちょっと紹介しませんけれども、後ろの部分ではるるそういうものをやっている。
私は、この間に何が変わったのかなと。要するに、去年の十月末からこの一月までの間にですね。
十月末の後でいえば、十一月八日には、桜を見る会で、参議院で予算委員会での質問があり、火を噴きました。十二月七日には、東京地検特捜部があきもと司衆議院議員の元秘書宅を捜索する。十二月二十五日には、東京地検特捜部が同議員を収賄で逮捕する。二十七日には、広島地検が河井あんり議員の捜査に着手したと報じられました。一月十四日には、安倍総理自身が桜を見る会で刑事告発されるんですね。一月十五日には、広島地検が河井夫妻の自宅などを捜索する。それを受けて、法務省が一月十六日に、例の内部メモですね、二〇〇一一六メモなるものを、本当にそのときにつくったのかわかりませんが、十六日。十七日には、内閣法制局と法務省の意見照会が行われる。一月二十二日には人事院。一月三十一日に閣議決定。こういう流れなんですね。
つまり、昨年、こうやって、検察官には当てはまりませんよと言っていた後、変わったのは、この検察官の当てはまらないという特殊性ではなくて、いわゆる刑事告発される、安倍総理自身が刑事告発されるというような、まさに安倍政権をめぐる刑事的な環境が変わっているわけです。
それを受けて出てきたのが、配付資料の一のこの改定案ですね。
これは私もびっくりしましたけれども、上が新しい方で下が古い方なんですが、下の現行法の方は、検察庁法二十二条というのは、この書きぶりで、この形式でいうと三行しかないんですね。それが、新しい方は、私数えてみたら、百四行もあるんですよ。めちゃくちゃふえているんですね。ふえているのはなぜかというと、無理やり、必要ないと言っていたものを当てはめるために、条文を物すごくひねくり回しているわけです。
きょうは、その中のうち、内閣の定める事由があるときというところに焦点を当てたいと思うんですけれども、この内閣が定めるところによりという、この内容というのは今決まっているんでしょうか。
○ 川原政府参考人 お尋ねはその内閣が定めるところによりの中身ということでお答えをさせていただきますが、検察庁法の改正案第二十二条第六項で、内閣の定めるところによりという要件につきましては、役おりの特例の期限の延長の要件を慎重に判断するものとするため、判断の手続や判断に際し考慮すべき事項などについて定めることを検討しております。
いずれにいたしましても、今後、国会での御審議を踏まえ、内容や具体的な形式について検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。
以上でございます。
○ 藤野委員 結局、いずれにしろの後で言ったように、今後の話なんですね。まだ何にも決まっていない。
大臣にお聞きしますが、要するに何も決まっていないもとで、この法律案の中に、検察官の人事への不当な政治介入を防ぐ担保となる規定というのはどこかにあるんでしょうか。
○ 森国務大臣 まず、検察官の人事の任命権者は内閣又は法務大臣であるということを確認させていただきます。
改正案の検察庁法第二十二条第六項では、検察官の役おりの特例の延長について、御指摘のとおり、内閣の定めるところにより、任命権者である内閣が延長することができる旨、規定をしております。
その定めについては、今後、国会での御審議を踏まえて検討を進めることになりますが、現時点では、検察官の役おりの特例の延長について、より慎重に判断するものとするため、判断の手続や判断に際し考慮すべき事項などについて定めることを検討しております。
このように、その定めにより、判断、手続が事前に明確化されることから、濫用を防止でき、適切に判断がなされるものと考えております。
○ 松島委員長 質疑時間が終了しておりますから、簡潔にお願いします。
○ 森国務大臣 はい、わかりました。
以上でございます。
○ 藤野委員 もう終わりますけれども、要するに、全く立法事実は変わっていないのにこういう解釈というか法案を出されてきたということ、そして、その法案の中には、法律上、全く、人事介入していく、政治介入していく歯どめはないということも明らかになりました。この問題は、引き続き厳しく追及していきたいと思います。
終わります。
会議録PDF
20200331_homuiinkai_Fujino_kaigiroku
質疑資料 PDF
20200331_homuiinkai_Fujino_shiryo
しんぶん赤旗 2020年4月1日4面記事 PDF
作成者 : fujinoyasufumi